小規模事業者とは?受けられる支援策や補助金・助成金を知ろう

創業手帳

小規模事業者と中小企業の定義を理解して違いを知ろう


企業の中には、大企業や中小企業があります。ほかにも、小規模事業者や個人事業主などの企業が複数あるため、それぞれの違いや意味を理解していない方もいるでしょう。
支援策を活用する場合は、違いを理解していないと申し込みができないケースもあります。

そこで今回は、それぞれの違いを知るためにも小規模事業者の定義をはじめ、個人事業主や中小企業の定義についても解説していきます。
さらに、小規模事業者が受けられる支援策についてもご紹介していくため、サポートを受けながら起業を目指したい方や、受けられる支援を知りたい事業者の方は参考にしてください。

小規模事業者とは?個人事業主や中小企業との違いを解説


まずは、小規模事業者・個人事業主・中小企業について、それぞれの定義を解説していきます。
また、みなし大企業や大企業についても説明していくため、「違いを知りたい」「開業する会社がどれに分類されるのか知りたい」とお考えの方は参考にしてください。

小規模事業者の定義

世の中には様々な法律がある中で、小規模事業者は「中小企業基本法」と呼ばれる法律により、中小企業と小規模事業者がそれぞれ定義されています。
小規模事業者については、業種や従業員の数により区分されています。

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 従業員数20人以下
商業・サービス業 従業員数5人以下

業種分類における商業は、卸売業や小売業を指しています。
また、小規模事業者支援法や小規模事業共済法、中小企業信用保険法では、宿泊業や娯楽業を運営している従業員20人以下の事業者を小規模企業として区分しています。

個人事業主の定義・小規模事業者との違い

個人事業主とは、その名の通り個人で事業を営んでいる人を指します。企業や団体には属さず、法人化をしないで事業を運営している人を総称し、個人事業主といいます。
国税庁が挙げている個人事業の例は以下の通りです。

  • 小売業
  • 卸売業
  • 賃貸業
  • 取引の仲介
  • 請負
  • クリーニング
  • 清掃
  • 理容
  • 弁護士
  • 医師
  • 公認会計士
  • 税理士 など

個人事業主であるため、1人で事業を行っている方もいます。また、家族や従業員と一緒に経営を行っている自営業者も、法人化していなければ個人事業主に含まれます。
個人事業主と小規模事業者の違いについて知りたい方もいるかもしれません。
特に、補助金の活用を検討する際に、小規模事業者と個人事業主の違いがわからない方も多くいます。

しかし、個人事業主であれば、ほとんどのケースで小規模事業者の定義に当てはまるでしょう。
補助金を活用できるケースも多いため、条件に当てはまっているのか窓口で相談してみてください。

中小企業の定義・小規模事業者との違い

中小企業と小規模事業者との違いを知るためには、中小企業の定義をチェックする必要があります。中小企業の定義は以下の通りです。

業種分類 中小企業基本法の定義
製造業その他 資本金額または出資の総額が3億円以下の会社
または常時使用の従業員数が300人以下
卸売業 資本金額または出資の総額が1億円以下の会社
または常時使用の従業員数が100人以下
小売業 資本金額または出資の総額が5,000万円以下の会社
または常時使用の従業員数が50人以下
サービス業 資本金額または出資の総額が5,000万円以下の会社
または常時使用の従業員数が100人以下

以上のように業種により規模を判断する材料は異なります。
資本金額・出資の総額がいずれか一方に当てはまっていれば中小企業に分類されるため、自社がどこに当てはまっているのか確認してみてください。
小規模事業者との違いは、従業員の人数です。そのため、中小企業の中でも特に小規模な事業者を小規模事業者として区分していると考えておいてください。

中小企業には例外として「みなし大企業」がある

業種により資本金の総額や従業員の数で中小企業は定義されていますが、条件に当てはまっている会社でも例外として「みなし大企業」に当てはまる会社もあるため注意してください。
みなし大企業に当てはまる会社は以下の通りです。

  • 企業規模は中小企業の定義に該当
  • 親会社が大企業の傘下

大企業の関連会社は、中小企業の定義に該当する場合でもみなし大企業に当てはまるため、法人税の軽減措置や補助金の対象外となるケースがあります。

また、租税特別措置法におけるみなし大企業の定義では、資本金額または出資の総額が1億円以下の法人とされています。

  • 発行済み株式または出資の1/2以上を同一の大規模法人に所有されている
  • 発行済み株式または2/3以上を大規模法人に所有されている

中小企業基本法では、製造業は資本金額または出資総額が3億円以下であれば中小企業といわれていますが、租税特別措置法ではみなし大企業に分類されていまいます。
法律や制度により定義が異なる点を理解しておいてください。

大企業には明確な定義はない

大企業は、誰もが知る会社であるイメージを持つ方も多いはずです。しかし、大企業には明確な定義がありません。
大企業を辞書で調べてみると「多額の資本を有し、多数の従業員を雇用している企業」と説明がなされているだけです。具体的な資本金額や従業員数は明示されていません。
しかし、中小企業は中小企業基本法で明確に定義されているため、中小企業に分類されない会社が大企業であると判断できます。詳しくは以下の表を確認してみてください。

製造業その他 資本金額または出資の総額が3億円以上の会社
または常時使用の従業員数が301人以上
卸売業 資本金額または出資の総額が1億円以上の会社
または常時使用の従業員数が101人以上
小売業 資本金額または出資の総額が5,000万円以上の会社
または常時使用の従業員数が51人以上
サービス業 資本金額または出資の総額が5,000万円以上の会社
または常時使用の従業員数が101人以上

小規模事業者が受けられる支援策5選


ここからは、小規模事業者が受けられる支援策をご紹介していきます。
起業や会社の運営では経営面で不安な部分もあるかもしれません。不安を払拭できる支援策であるため、興味があればぜひ活用してみてください。

1.経営課題を支援する「中小企業応援センター」

中小企業応援センターは、経営に関する様々な課題を解決に導く支援を実施してくれます。

  • 新事業の展開
  • 創業
  • 再チャレンジ
  • ものづくり
  • 事業承継
  • 新しい経営手法の展開

 
高度で専門的な課題に悩む企業の方もいるかもしれません。ひとりで抱えても問題は解決しないため、中小企業応援センターに相談してみてください。
アドバイスをもらえるため、悩み解消を目指せる可能性があります。
また、マッチングやセミナーの開催、支援策の情報提供も実施しています。相談窓口は都道府県ごとに用意されているため、調べてみてください。

2.経営面の指導を実施する「経営改善普及事業」

商工会、商工会議所で実施されている支援策が経営改善普及事業です。

  • 経理
  • 税務
  • 融資
  • 労務
  • 創業
  • 販路開拓
  • 情報化推進
  • 講習会
  • 研修会

などの様々な支援を行っています。
それぞれの分野に精通した指導員が相談に応じ、的確なアドバイスを提供してくれます。
創業に関する相談以外にも確定申告や年末調整、システムの効率化や資金調達など、幅広い悩みを相談できる点が魅力です。
相談料は無料であるため、気軽に相談できます。また、状況により企業訪問も実施されますが、各地域の商工会があるエリアの事業者が対象です。
最寄りの商工会を確認してから相談してみてください。

3.無担保・無保証人・低利で利用できる「マル経融資」

マル経融資は、「小規模事業者経営改善資金」が正式名称の支援策です。
商工会や商工会議所で経営指導を受けている小規模事業者の商工業者が、経営の改善に必要となる資金を確保できる支援策となっています。

  • 融資限度額:2,000万円
  • 返済期間(うち据置期間):運転資金7年以内(1年以内)、設備資金10年以内(2年以内)
  • 税率:特別税率

無担保・無保証人で利用でき、金利は特別利率となるため低い利率で融資を受けられる点が魅力です。最寄りの商工会、商工会議所に相談してみてください。

4.設備導入のための支援「小規模企業者等設備貸与事業」

創業時や経営の革新時に必要となる設備導入に活用できる支援策が小規模企業者等設備貸与事業です。

  • 対象:小規模企業者(従業員数50人以下の企業)または創業者
  • 利用限度額:1億円
  • 利率:実施機関によって異なる
  • 返済期間:10年以内
  • 担保、保証人:必要となるケースあり

利率や保証人、詳しい条件などは、確認して相談してみてください。

5.経営者の退職金制度「小規模企業共済制度」

小規模企業共済制度は、経営者のための退職金制度です。月々数千円ほどから積み立てでき、掛け金は全額を所得控除できるメリットがあるため節税効果があります。
共済金は退職や廃業時に受け取ることが可能で、満期や満額はありません。受け取り方法も、一括・分割・併用の3種類から自由に選べます。

加入できる条件は以下の通りです。

  • 常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業の場合は5人以下)の個人事業主または役員
  • 事業に従事する組合員が20人以下の企業組合の役員
  • 常時使用する従業員が20人以下の協業組合役員
  • 常時使用する従業員数が20人以下の農業経営を主とする農事組合法人役員

また、無担保無保証で事業資金の貸付けも実施されています。創業転業時貸付け、事業承継貸付け、傷病災害時貸付けなど、様々な制度があり、低金利で利用できます。

小規模事業者が受けられる補助金・助成金5選


次に、小規模事業者が活用できる補助金や助成金制度を5つピックアップして解説していきます。資金面で不安の大きい方は利用を検討してみてください。

経費の一部を補助する「小規模事業者持続化補助金 」

販路開拓や業務効率化を図るために、経費の一部を補助してくれるのが小規模事業者持続化補助金です。補助の対象となるのは商工会地域の小規模事業者です。

  • 通常枠
  • 賃金引上げ枠
  • 卒業枠
  • 後継者支援枠
  • 創業枠

上記5つの中から1つを選択して申請ができます。それぞれ補助上限や補助率に違いがあるため注意してください。
また、申し込みの際には経営計画書や補助事業計画書の作成が必要です。商工会議所の指導や助言を受けて作成できるため、不明な点を相談しながら作成してください。
さらに、事業支援計画書の作成を商工会議所側で作成してもらう必要があります。締め切りに間に合わせるためにも余裕を持って準備を進めることが大切です。

東京都による助成制度「創業助成事業」

東京都では、都内での開業率を上げるために創業助成事業を提供しています。
助成対象者は、東京都内で創業をするための計画を具体的に実施している個人や創業後5年未満の中小企業者のうち、一定の要件を満たしている方です。
限度額は300万円となっています。
助成対象の経費は以下の通りです。

  • 事務所やオフィスの賃借料
  • 広告費
  • 備品や器具の購入費
  • 雇用に必要となる人件費
  • 産業財産権出願・導入費
  • 専門家指導費

申請書を作成、提出後に書類審査が実施されます。そのあと、面接審査が行われ交付が決定する仕組みです。
都内で会社の経営を目指している方や、すでに事業を始めている中小企業の方は活用を検討してみてください。

ITツールの導入時に活用できる「IT導入補助金」

生産性を目的としたITツール導入時の経費を、国に一部補助してもらえる制度がIT導入補助金です。
「サービス等生産性向上IT導入支援事業補助金」が正式名称です。対象となるITツールの例を挙げていきます。

  • 営業/顧客管理:顧客管理システム、マーケティングオートメーションなど
  • 会計/経理関係:会計ソフト、請求書発行システムなど
  • 生産管理:在庫管理システム、品質管理システムなど
  • 人事/労務管理:給与計算システム、採用管理システムなど
  • 業務効率化:RPA(業務自動化)

そのほか、電子カルテや工事原価作成ツールなどのツールも対象です。

設備投資を支援する「ものづくり補助金」

正式名称は、「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。
制度の変更に対応するための革新的サービスの開発や試作品の開発、生産プロセスの改善などを実施するための設備投資を支援する補助金となっています。

  • 付加価値額を年平均3%以上増やす
  • 給与支払総額を年平均1.5%以上増やす
  • 事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上にする

以上の要件を満たし、3年~5年の事業計画を策定し実施する中小企業が対象です。補助額や補助率は、枠により異なります。

ものづくり補助金ついて、詳しくはこちらの記事を>>
【2024年最新】最大1億円!ものづくり補助金をわかりやすく解説!

事業再構築の挑戦を支援する補助金「事業再構築補助金」

事業や業種転換、新市場進出、事業再編といった取組みを通じ、規模の拡大を目指す中小企業の支援策として用意されている補助金が事業再構築補助金です。
通常枠・大規模賃金引上枠・卒業枠・グローバルV字回復枠・緊急事態宣言特別枠・最低賃金枠の6つが用意されており、それぞれ補助額や補助率に違いがあります。
通常枠の補助額・補助率は以下の通りです。

【通常枠】
  • 従業員20人以下:補助額100~4,000万円
  • 従業員21~50人:補助額100~6,000万円
  • 従業員51人以上:補助額100~8,000万円
  • ※補助率は、2/3となっており6,000万円を超える場合は1/2です。

まとめ

小規模事業者の定義や受けられる支援策や補助金・助成金について解説しました。受けられる支援策や補助金があるのなら、積極的に活用することをおすすめします。

しかし、支援策は企業の分類により受けられないケースもあります。
中小企業や小規模事業者の範囲を理解し、自社が支援を受けられるのかあらかじめ確認してから申請を行うようにしてください。

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また、都道府県単位での補助金・助成金については、「補助金AI」にご登録していただけると、定期的にメールで登録された地方の補助金情報をお届けします。合わせて是非ご活用ください。


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(編集:創業手帳編集部)

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